「半導体量子構造におけるスピン軌道相互作用を用いた永久スピン旋回状態の制御」
好田 誠 氏
Nov 10, 2017
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: 半導体量子構造におけるスピン軌道相互作用を用いた永久スピン旋回状態の制御
講 師 : 好田 誠 博士
東北大学大学院工学研究科
日 時 : 平成29年11月10日 (木) 16:30-17:30
場 所 : 北海道大学 工学部 物理工学系大会議室 (A1-17室)
要 旨 :
半導体におけるスピン軌道相互作用は、結晶やヘテロ構造の反転対称性の破れに起因し、電子スピンに対して有効磁場を与える相互作用である。この有効磁場は、半導体の有する精密なバンド構造設計や微細加工と組み合わせることで、ゲート電場などを介し外部制御できる。よって、スピン生成やスピン制御といったスピントロニクスデバイスの要素技術を外部磁場や強磁性体を必要とすることなく構築できる利点を有する。特にIII-V族化合物半導体量子構造では、異なる対称性を有するRashbaおよびDresselhausタイプのスピン軌道相互作用が存在する。この2つのスピン軌道相互作用を等しい強さにすると、誘起される有効磁場は1軸方向に揃いSU(2)対称性を有するため、永久スピン旋回状態と呼ばれるヘリカルスピン秩序を形成する。この永久スピン旋回状態の利点は、スピン軌道相互作用が存在しているにも拘らずスピン緩和が抑制できるため、有効磁場によるスピン制御と長距離スピン輸送を同時に実現できる点にある。本講演では、GaAsやInGaAs量子井戸における有効磁場(スピン軌道相互作用)の精密測定手法[1,2]や、永久スピン旋回状態のゲート制御および細線構造を利用したスピン緩和の抑制について最近の研究を紹介する[3-5]。 [1] M. Kohda et al., Appl. Phys. Lett. 107, 172402 (2015). [2] A. Sasaki et al., Nat. Nanotech. 13, 703 (2014). [3] K. Yoshizumi et al., Appl. Phys. Lett. 108, 132402 (2016). [4] P. Altmann et al., Phys. Rev. B 92, 235304 (2015). [5] Y. Kunihashi et al., Nat. Commun. 7, 10722 (2016).
世話人 足立 智
北海道大学工学部応用理工系学科 (電話011-706-6115)