「複雑ネットワークの統計物理―相転移と臨界現象の変わった話」
長谷川 雄央 氏
Sep 06, 2019
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: 複雑ネットワークの統計物理―相転移と臨界現象の変わった話
講 師 : 長谷川 雄央 氏
茨城大学理学部数学情報数理領域
日 時 : 令和元年9月6日 (金) 16:30~18:00
場 所 : 北海道大学理学部2号館2-211室
共 催 : 第263回エンレイソウの会
要 旨 :
ネットワークとは頂点と頂点間を結ぶ辺の集合であり、つながり・関係を表現す るのに使うことができる。WWW、友人関係、食物連鎖等、我々の周りには巨大で 複雑なネットワークが様々ある。そのような複雑ネットワークに関する研究は 1990年代末に始まり、現実ネットワークの多くは「次数分布がべき則に従う」ス ケールフリー性や「ネットワークの平均距離が頂点の対数オーダーになる」スモ ー ルワールド性を持つことが明らかになった。現実ネットワークのそういった特徴 を再現するネットワークの生成モデルも数多く提案されている。 複雑なネットワークの上に配置された統計物理モデル(パーコレーション、コン タクトプロセス、イジングモデル等)について調べる研究も数多くある。ネット ワーク上に配置された統計物理モデルは相転移を示す。対称性の高いユークリッ ド格子と異なり、複雑ネットワークはランダムで非一様なつながりをしており、 スケールフリー性やスモールワールド性などの特徴を持つ。そのため、複雑ネッ トワーク上で起こる相転移もまた、標準的なユークリッド格子系ではみられない ような、変わった性質を示す。 本講演では、相転移を示す最も単純な統計物理モデルであるパーコレーションを 扱い、複雑なネットワーク構造が引き起こす変わった相転移を紹介する。前半は、 臨界点の単一性についてとりあげる。ユークリッド格子上のボンドパーコレーシ ョ ンは一つの臨界「点」で相転移を起こすが、複雑ネットワークでは臨界状態が有 限領域にわたる臨界「相」が現れる。臨界相の特徴を、臨界相の出現条件につい ての考察とともに、紹介する。後半は、パーコレーションのユニバーサリティに ついてとりあげる。ユークリッド格子上のサイトパーコレーションは、ボンドパ ー コレーションと同じユニバーサリティクラスに属し、定性的に同じ振舞いをする。 しかし、ネットワークによっては、ユニバーサリティが破れる。階層的なネット ワークを例に紹介する。
世話人 根本 幸児
(nemoto@statphys.sci.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院理学研究院物理学部門