「FIB微細加工と三次元ベクトル強磁場を用いた物性研究」
木俣 基 氏
Dec 26, 2023
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: FIB微細加工と三次元ベクトル強磁場を用いた物性研究
講 師 : 木俣 基氏
東北大金研
日 時 : 2023年12月26日(火) 17:00-18:00
場 所 : 北海道大学理学部2号館 2-211(ハイブリッド)
要 旨 :
時間と空間の反転対称性が同時に破れた系では、固体中の電気と磁気の結合現象が生じることが知られている。代表例は磁性絶縁体における磁性と電気分極の交差相関でありマルチフェロイクスとして盛んに研究されてきた。一方、伝導系物質では電気分極が伝導電子によって遮蔽されるため電気分極は存在しない。そのためどのような形態の電気磁気結合が生じるのか自明ではなかったが、近年、電流誘起磁化[1-3]や非相反伝導[4-7]等の金属に特有な電気磁気結合が観測され注目を集めている。 最近我々は、集束イオンビーム(FIB)を用いて単結晶を微細加工することで抵抗測定の精度を上げ、非相反抵抗の定量評価やパルス強磁場中での精密輸送測定を行っている。今回の発表では FIB による単結晶微細加工を用いた最近の進展を概観するとともに,この技術を活用した実験例として,ジグザグ反強磁性体におけるゼロ磁場での自発的な巨大非相反抵抗と反強磁性ドメインの可視化,パルス強磁場下におけるスピン三重項超伝導体の精密抵抗測定[8]などについて紹介する。 また東北大学金属材料研究所の強磁場施設は、20 T以上の定常強磁場を提供できる国内唯一の施設であり、マグネット冷却に液体ヘリウムを使わない無冷媒強磁場マグネットなど、高磁場を数日オーダーで維持可能な世界的にも特徴ある装置群を有している。我々は、この定常強磁場環境のメリットを最大限活用するため、二軸回転機構を組み合わせた「三次元ベクトル強磁場」を構築して研究を行っている。特にこれまで主体であった抵抗測定[9-11]のみならず、NMR[12]や交流磁化率[13]、比熱、超音波、高圧下実験等の多様な実験が可能となっている。これまでの実験例や今後の展開を紹介する。
[1] T. Furukawa et al., Nat. Commun. 8, 954 (2017).
[2] H. Saito et al., J. Phys. Soc. Jpn. 87, 033702 (2018).
[3] Y. Nabei et al., Appl. Phys. Lett. 117, 052408 (2020).
[4] T. Ideue et al., Nat. Phys. 13, 578–583 (2017).
[5] R. Aoki et al., Phys. Rev. Lett. 122, 057206 (2019).
[6] K. Ota et al., arXiv:2205.05555.
[7] K. Sudo, et. al., Phys. Rev. B., 108, 125137 (2023).
[8] T. Helm, et al., arXiv:2207.08261.
[9] M. Kimata et al., Appl. Phys. Lett. 116, 192402 (2020).
[10] K. Nakagawa et al., Phys. Rev. B 107, L180405 (2023).
[11] K. Sugi et al., Phys. Rev. B 108, 064434 (2023).
[12] K. Kinjo et al., Phys. Rev. B 107, L060502 (2023).
[13] H. Sakai et al., Phys. Rev. Lett. 130, 196002 (2023).
世話人: 柳澤達也
(tatsuya@cris.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院理学研究院