「強磁場量子極限下のトポロジカル半金属における量子化熱電ホール効果の探索」
長田 俊人 氏
Dec 13, 2024
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: 強磁場量子極限下のトポロジカル半金属における量子化熱電ホール効果の探索
講 師 : 長田 俊人 氏
東京大学物性研究所
日 時 : 2024年12月13日(金)13:30-14:30
場 所 : 北海道大学理学部 2-221室
要 旨 :
3次元ワイル/ディラック半金属では、強磁場量子極限において熱電ホール伝導度(∝横電流/温度勾配)が磁場によらず温度に比例した一定値をとり(量子化熱電ホール効果)、ゼーベック係数が磁場に比例して増大することが理論的に示され、これを示唆する実験結果がいくつかの物質で報告されている。この効果は使用可能な熱電材料が存在しない極低温領域での発電を可能にするため、宇宙応用などへの可能性が議論されている。より完全な量子化熱電ホール効果が期待される2次元ディラック電子系を有する有機導体α-(ET)2I3での実験結果の検証、3次元直線状ノーダルライン半金属における量子化熱電ホール効果に対して行った理論的予測と、単結晶グラファイトを用いた検証実験について紹介する。
世話人 福岡 脩平
(fukuoka@phys.sci.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院理学研究院物理学部門
「光の量子性を用いた計測技術」
岡本 亮 氏
Nov 26, 2024
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: 光の量子性を用いた計測技術
講 師 : 岡本 亮 氏
京都大学 工学研究科・准教授
日 時 : 2024年11月26日(火)16:30〜18:00
場 所 : 北海道大学 工学部 アカデミックラウンジ3
要 旨 :
光計測技術は、基礎科学から産業、医療に至る幅広い分野で利用されている。たとえば、重力波検出には巨大な光干渉計が、また、街並みの3次元データ化や自動運転技術にはレーザーレーダー(LiDAR)が活用されている。これらの技術は、古典的な光の描像に基づいているが、光はその素粒子である光子からなり、古典電磁気学では説明できない「量子性」を備えている。本講演では、光の量子性に注目することで実現可能となる新しいセンシング・計測技術について、我々の研究を中心に紹介する。
世話人 小布施 秀明
(hideaki.obuse@eng.hokudai.ac.jp)
北海道大学 大学院 工学研究院 応用物理学部門
「Specifics of spin excitations in centrosymmetric helimagnets」
Dmytro S. Inosov 氏
Oct 11, 2024
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: Specifics of spin excitations in centrosymmetric helimagnets
講 師 : Prof.Dr.rer.nat Dmytro S.Inosov
TU Dresden
日 時 : 2024年10月11日(金) 13:30-
場 所 : 北海道大学理学部 2-221室
要 旨 :
Noncollinear long-range ordered magnetic structures that break chiral symmetry can arise either as a result of Dzyaloshinskii-Moriya interactions in lattices with broken inversion symmetry or as a result of bond frustration in structurally centrosymmetric crystals. While in the former case the spin chirality is uniquely chosen by the lattice symmetry, in the latter case the chiral symmetry is broken spontaneously, so that both right- and left-handed magnetic domains can coexist. Using inelastic neutron scattering, we have studied spin waves in a number of centrosymmetric helimagnets with different magnetic ground states. The cubic spinel ZnCr2Se4 is described by frustrated interactions and represents a perfect model system for studying the Heisenberg model on the perfect pyrochlore lattice. Here, an emergent energy scale of the pseudo-Goldstone magnon gap leads to highly nontrivial thermodynamic and thermal transport properties and to the appearance of a field-induced spiral spin liquid state. The iron perovskite compounds SrFeO3 and Sr3Fe2O7, on the other hand, avoid the simple spin-spiral state and form multiple-q orders of various types, whose spin-wave spectrum is still a challenge for theoretical calculations. At elevated temperatures, all the mentioned compounds exhibit an intense quasielastic spin-fluctuation spectrum in neutron spectroscopy, which coexists with the sharp collective spin-wave excitations and could be a universal feature of the centrosymmetric helimagnets in general. It is possible that its origin is connected with the dynamics of domain walls that separate helimagnetic domains of opposite chirality.
世話人 井原 慶彦
(yihara@phys.sci.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院理学研究院物理学部門
「磁場角度分解熱物性測定の高度化と物性研究への応用」
橘高 俊一郎 氏
Sep 13, 2024
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: 磁場角度分解熱物性測定の高度化と物性研究への応用
講 師 : 橘高俊一郎 氏
東京大学大学院総合文化研究科
日 時 : 2024年9月13日 (金) 16:30-17:30
場 所 : 北海道大学理学部 5-201
要 旨 :
熱ゆらぎのない絶対零度の量子臨界点近傍では、量子ゆらぎによって新奇な基底状態や低エネルギー励起状態が創出される。こうした現象はしばしば顕著な異方性を示し、外場の大きさだけでなく、外場の方位にも敏感に応答することがある。このような磁場方位の効果を、理論計算可能な熱力学量を用いて追究することで、物性機構の解明に繋がる重要な知見を得ることが期待できる。しかしながら、極低温の熱力学量測定から磁場方位の効果まで詳細に調べた例は多くない。 本講演では、我々が最近取り組んでいる磁場方位制御下での極低温熱物性測定の高度化および物性研究への応用例について紹介する。具体的には、磁場角度分解磁歪測定によるFFLO超伝導相転移の研究[1]や、量子臨界性を特徴づけるための新たな実験アプローチ[2, 3]などについて取り上げ、特徴的な異方性を示す量子現象について議論する。
[1] S. Kittaka et al., Phys. Rev. B 107, L220505 (2023).
[2] S. Kittaka et al., J. Phys. Soc. Jpn. 90, 064703 (2021).
[3] S. Yuasa and S. Kittaka et al., submitted.
世話人 井原 慶彦
(yihara@phys.sci.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院理学研究院物理学部門
「μSRと第一原理計算で迫る銅酸化物高温超伝導体の電子スピン状態」
渡邊 功雄 氏
Aug 27, 2024
日本物理学会北海道支部講演会・第298回エンレイソウの会
講演題目: μSRと第一原理計算で迫る銅酸化物高温超伝導体の電子スピン状態
講 師 : 渡邊 功雄 氏
理化学研究所 専任研究員
日 時 : 2024年8月27日 (火) 16:30-17:30
場 所 : 北海道大学工学部 A1-17 (物理工学系大会議室)
要 旨 :
ミュオンスピン緩和法(μSR)は、高感度磁気プローブである素粒子ミュオンを活用して物質の電子状態を解明する。導入するミュオンの停止位置は制御できないため、物質中でミュオンがどのような状態を形成して周囲の電子状態を観測しているかという問題は、実験データからのみでは明確にわからない。近年、この問題に関して凡密度関数法を用いた第一原理計算を活用して解決する研究活動が盛んにおこなわれている。我々は、この世界的な計算科学研究の潮流をリードしてきた。本講演では、この第一原理計算を活用することによって長年解決できなかったLa系銅酸化物高温超伝導体の母物質であり低温で反強磁性秩序状態が発現するLa2CuO4中のミュオン位置を明らかにし、μSRから見た反強磁性秩序状態を定量的に解釈した研究結果に関して報告する。
世話人 市村 晃一
(ichimura@eng.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門
"Metaphotonics and Mie-tronics"
Yuri Kivshar 氏
May 20, 2024
日本物理学会北海道支部講演会・応用物理学会北海道支部講演会・第21回応用物 理学コロキウム・第297回エンレイソウの会
講演題目: Metaphotonics and Mie-tronics
講 師 : Yuri Kivshar 氏
(Australian National University, Professor)
日 時 : 2024年5月20日(月) 16:30-18:00
場 所 : 北海道大学工学部 アカデミックラウンジ 3(B3-201)
要 旨 :
Recent progress is subwavelength optics is driven by the physics of optical resonances. This provides a novel platform for localization of light in subwavelength photonic structures and opens new horizons for metamaterial-enabled photonics, or metaphotonics. Recently emerged field of Mie-resonant metaphotonics (also called "Mie-tronics") employs resonances in high-index dielectric nanoparticles and dielectric metasurfaces and aiming for novel applications of subwavelength optics and photonics, benefiting from low material losses and optically-induced magnetic response. In this talk, I will review the recent advances in Mie-tronics and its applications in metaphotonics and metasurfaces, including generation of structured light and chiral metaphotonics.
Biography:
Professor Yuri Kivshar received PhD degree in 1984 in Kharkov (Ukraine). He left the Soviet Union in 1989 and after several visiting positions in Europe, he settled in Australia in 1993. He is Fellow of the Australian Academy of Science since 2002, and also Fellow of Optica, APS, SPIE, and IOP. He received many awards, more recently 2022 Max Born Award (Optica, former OSA). His research interests include nonlinear physics, metamaterials, and nanophotonics.
世話人: 森田 隆二
(morita@eng.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門
「CeCoSiの強磁場物性とその隠れた秩序相に関する研究」
神田 朋希 氏
May 08, 2024
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: CeCoSiの強磁場物性とその隠れた秩序相に関する研究
講 師 : 神田 朋希 氏
北大理
日 時 : 2024年5月8日(水) 16:30-
場 所 : 北海道大学理学部2号館 2-211
要 旨 :
本講演で取り上げるCeCoSiでは、2019年に常磁性相(I相)と反強磁性相(III 相)の間に、秩序変数が自明ではない「隠れた秩序相」(II相)が確認された[1]。 最新のNMR実験から、II相はQzx + Qyz型の強電気四極子秩序とされている[2]。 しかし正方晶であるCeCoSiの結晶場基底状態には電気四極子自由度は存在しない ため、電気四極子秩序は本来起こりえない。そのためCeCoSiにおける電気四極子 自由度の起源が活発に議論されている。またCeCoSiでは結晶場状態に関してもコ ンセンサスが得られておらず、強磁場磁化過程により結晶場状態を決定する必要 があった。 本研究ではパルス強磁場を用いた60 Tまでの磁化、磁気トルク、非接触電気抵 抗、磁気熱量効果、比熱の各測定を行った[3]。得られた磁化過程に対して、磁 化の計算値をフィッティングすることで結晶場状態を決定した。また磁気トルク 測定では20 T以上の強磁場領域において、結晶の対称性からは非自明な4倍周期 の磁気異方性を観測した。本研究では磁気異方性の計算から、結晶場基底状態と 第一励起状態との混成により4倍周期の磁気異方性が生じることを示した。さら に磁場による結晶場状態の混成によってQzx, Qyzの電気四極子自由度が活性にな ることを示した。 本講演ではCeCoSiに対して行われてきた研究をレビューするとともに、パルス 強磁場実験によって明らかとなったCeCoSiの強磁場物性と隠れた秩序相との関係 について詳しく議論する。
[1] H. Tanida et al., J. Phys. Soc. Jpn. 88, 054716 (2019).
[2] M. Manago et al., Phys. Rev. B 108, 085118 (2023).
[3] T. Kanda et al., Accepted in Phys. Rev. B
世話人: 井原 慶彦
(yihara@phys.sci.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院理学研究院物理学部門
Can Bose-Einstein condensation occur via a first-order transition?
Apr 12, 2024
Title: "Can Bose-Einstein condensation occur via a first-order transition?"Prof. Pawel Jakubczyk
Faculty of Physics, University of Warsaw
April 12, Friday, 10:00 - 11:00
Seminar room on 1st floor, Sakura, NIMS
I will discuss the finite-temperature phase diagram of the mean-field Bose mixture. I will point out the possibility of realising Bose-Einstein condensation as a first-order phase transition and the occurrence of a van der Waals type transition within the non-condensed region of the phase diagram. The latter transition may be realized even in presence of purely repulsive microscopic interactions.
Zoom link :
https://us06web.zoom.us/j/81483289716?pwd=kuxF5QVv2khBaCrEVAHqBmqayQyC7f.1
meeting ID: 814 8328 9716
passcode: 974251
Contact: Hiroyuki Yamase (yamase.hiroyuki@nims.go.jp)
Takafumi Kita (kita@phys.sci.hokudai.ac.jp)
Condensed Matter Physics Seminar
Co-sponsored by the Physical Society of Japan Hokkaido Branch Lecture Series
「放射光X線と中性子散乱の相補利用を通した局所反転対称性のないf電子系化合物の研究」
田端 千紘 氏
Jan 16, 2024
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: 放射光X線と中性子散乱の相補利用を通した局所反転対称性のないf電子系 化合物の研究
講 師 : 田端 千紘 氏
日本原子力研究開発機構・研究員
日 時 : 2024年1月16日(火) 17:00-18:00
場 所 : 北海道大学理学部2号館 2-211 (+オンライン)
要 旨 :
希土類元素やアクチノイド元素を含んだ化合物では、不完全殻のf電子が担う多 様な磁気秩序や多極子秩序が現れることが知られている。これらの磁気秩序や多 極子秩序は、系がもつ対称性と密接に関連し、電気・磁気交差相関現象をはじめ とした新奇物性発現の源となっている。カゴメやハニカムなど、磁性イオンサイ トに空間反転対称性がない系は、このような物性の宝庫であり、近年盛んに研究 が行われている。例えば、UNi4Bでは磁気秩序に伴う時間・空間反転対称性の消 失に起因して、金属にもかかわらず電気磁気効果が現れる。カイラル磁性体であ るEuPtSiでは、非常に短周期の磁気スキルミオン秩序が現れ、そこでは巨大な輸 送特性異常が生じる。こういった電子秩序構造の微視的情報を得るためには、中 性子やX線などの量子ビームによる回折・散乱実験が不可欠である。講演では、 上記の化合物に加え、我々が最近取り組んでいるカゴメ構造やハニカム構造を有 するf電子系磁性化合物について、中性子とX線の相補的な利用を通して電子秩序 を観測する研究例を紹介する。
世話人 網塚 浩
(amiami@phys.sci.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院理学研究院物理学部門