「消える『双子のパラドクス』」
原田 稔 氏
Sep 28, 2011
物理学会北海道支部講演会
講演題目: 「消える『双子のパラドクス』」
講師: 原田 稔 氏
小樽商科大学名誉教授
日 時 : 平成23年9月28日(水) 16:00-17:00
場 所 : 北海道大学理学部2号館2階 2-211
要 旨 :
「双子のパラドクス」は相対論のパラドクスの中で最もポピュラーなものであ るが、本質的には相対論的時間の解釈に関係した問題である。 相対論では基準系によって時間が異なるとされているが、この“異なる”とい うことの物理的意味に関しては、必ずしも明快な説明が与えられているわけでは な い。物理の場合、時間は自然現象との関連で定められるので、“時間が異な る”ということが自然現象のリズムの変化と受け止められていると言っても過言 ではない。その典型例が、動く基準系と静止基準系とでは歳の取り方が違うと いうもので、「双子のパラドクス」の原点をなしている。 しかし、相対論で登場する時間は、自然現象と1対1の対応関係をもつものでは ないのである。相対論での時間や空間は、物理法則を表現する便宜のために考案 された一種の言語であって、基準系が異なれば時間・空間座標も変わるが、その 影響は法則の表現形式には及ばないのである。したがって、歳を取るという物理 現象は時間座標の変更の影響は受けないということになる。これは、メンデル・ サックスがかねてより主張しているところであるが、自然法則の普遍性を考えれ ば至極当然なことと言えよう。 しかしながら、従来の「双子のパラドクス」に関する議論では、基準系の変更 によって歳の取り方が変わるとされているのである。サックスは上述のような観 点から、双子の相対運動によって年齢差が発生するはずはないと警鐘を鳴らして いるが、この主張を、オーソドックスな相対論の議論に基づいて完全に正当化し ているのが、小生の論文[Physics Essays 24,454(2011)]である。 尚、この問題に対して、従来から関連性が指摘されている加速度の取り扱いに ついては完全に正当化し得るものではないことに注意を喚起しておきたい。
世話人 北 孝文
(kita@phys.sci.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院理学研究院物理学部門