「ガラス転移、ジャミング転移における剛性と降伏応力の発生」
吉野 元 氏

Nov 07, 2014


日本物理学会北海道支部講演会

講演題目: ガラス転移、ジャミング転移における剛性と降伏応力の発生
講 師 : 吉野 元 氏
     大阪大学サイバーメディアセンター  准教授
日 時 : 平成26年11月7日 (金) 16:30-18:00
場 所 : 北海道大学理学部2号館211室(2-2-11)

要 旨 :
「水は方円の器にしたがう」が、固体はそうはいかない。容器の中身が「固体」であるかそうでないかを判別するには、容器の体積を変えずに「形」だけ変える操作、すなわち剪断(シア)を掛れば良い。理想気体ですら、体積変化に対する弾性(体積弾性率)を有限に持つ。しかしシアモジュラス(剛性率)を有限に持つのは固体だけである。ガラスに対する第一原理的なアプローチとして、クローン液体論と呼ばれる方法が最近急速に発展している。これは、ランダム系の統計力学で発展したレプリカ法と、伝統的な液体の密度汎関数理論を融合させた理論である。特に最近、無限大次元で厳密な平均場理論が定式化され、通常のガラス転移に伴う1段階のレプリカ対称性の破れに留まらず、ジャミング転移点近傍においては連続的なレプリカ対称性の破れが上乗せされて起こることが明らかになった。[1] 我々は、このクローン液体論を用いて、ガラス転移、ジャミング転移で系が獲得する剛性率、また降伏応力を、第一原理的に解析する手法を開発してきた。[2,3,4,5] レプリカ法を用いると、液体をひねってガラスの硬さを求めるという一見非常に奇妙な事が出来る。[6] 興味深いことに、レプリカ対称性の破れ[1]を反映して、剛性率にも時間スケールに応じたある種の階層構造が予想される。セミナーでは、この結果に基づき、高濃度エマルジョン系でのレオロジー測定[7]、数値シミュレーションによる応力緩和の測定[8]の結果との比較についても議論する。 [1] P. Charbonneau, J. Kurchan, G. Parisi, P. Urbani, F. Zamponi,Nature Communications 5, 3725 (2014). [2] H. Yoshino and M. Mezard, Phys. Rev. Lett. 105, 015504 (2010). [3] Y. Yoshino, J. Chem. Phys. 136, 214108 (2012) . [4] H. Yoshino and F. Zamponi, Phys. Rev. E 90, 022302 (2014). [5] C. Rainone, P. Urbani, H. Yoshino and F. Zamponi, submitted. [6] 日本物理学会誌67号10巻p699(2012) 最近の研究から「ガラスの硬さを計るレプリカ理論」 [7] G. Mason, Martin-D Lacasse, Gary Grest, Dov Levine, J Bibette, D Weitz, Phys. Rev. E 56, 3150 (1997). [8] T. Nakayama, S. Okamura and H. Yoshino, in progress.

世話人  野嵜龍介
(nozaki@sci.hokudai.ac.jp)
北海道大学理学部物理学科 (電話011-706-3484)


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