「空間反転対称性の破れた系でのトポロジカル相とスピントロニクス」
村上 修一 氏

Nov 27, 2017


日本物理学会北海道支部講演会

講演題目: 空間反転対称性の破れた系でのトポロジカル相とスピントロニクス
講 師 : 村上 修一 博士
     東京工業大学理学院
日 時 : 平成29年11月27日 (月) 16:30-17:30
場 所 : 北海道大学 工学部 応用物理学専攻会議室 (A3-62室)

要 旨 :
固体結晶の多くは空間反転対称性を有しているが、一方で空間反転対称性が破れた結晶もある。本講演では、こうした空間反転対称性が破れた結晶においてのみ実現される、特異なトポロジカル相やスピントロニクスの性質について、最近の研究成果を紹介する。  スピントロニクスに関しては、例えば物質表面で実現されるラシュバ分裂と呼ばれるスピン分裂が詳しく研究されているが、一方でバルクの結晶構造自身が空間反転対称性を破るものもあり、閃亜鉛鉱型の半導体(GaAs等)や、テルルなどのらせん状の鎖からなる結晶構造などがある。例えばラシュバ分裂を持つ系など反転対称性の破れた系では、電流を流すとスピン偏極が生じるエーデルシュタイン効果がある。本講演では最近我々の予言したエーデルシュタイン効果の変種を2つ[1,2,3]紹介する。1つは軌道エーデルシュタイン効果であり、例えばテルルのようならせん型結晶では、ソレノイドとの類推により、金属の場合に電流を流すと磁化が電流と平行ないし反平行に誘起されるものである[1,2]。もう一つはフォノンの熱エーデルシュタイン効果である。一般の波数におけるフォノンは縦波と横波との混成により一般に回転成分を持ち、角運動量を担う。時間反転対称性を持つ結晶であれば平衡状態でフォノン角運動量の和はゼロであるが、熱流を流すと結晶全体でフォノン角運動量が誘起できることを示した[3]。これを例えばテルルにおいて第一原理計算を行って評価した。  また、空間反転対称性が破れているときに現れるトポロジカル相というものがあり、例えばワイル半金属がその例である。このワイル半金属の基本的な性質とトポロジーの関係、また物質における実現例について議論する[4,5,6]。 [1] Yoda, Yokoyama, Murakami, Sci. Rep. (2015). [2] Yoda, Yokoyama, Murakami, arXiv:1706.07702. [3] Hamada, Minamitani, Hirayama, Murakami, preprint (2017). [4] Murakami, New J. Phys. 9, 356 (2007) [5] Murakami, Hirayama, Okugawa, Miyake, Sci. Adv. 3, e1602680 (2017) [6] Hirayama, Okugawa, Ishibashi, Murakami, Miyake, PRL 114, 206401 (2015)

世話人  鈴浦 秀勝

北海道大学工学部応用理工系学科 (電話011-706-6115)


Category: 支部講演会 | Static URL: /seminar/20171127.htm | Edit
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