「エキゾチック超伝導体における非相反・非対角応答」
柳瀬 陽一 氏
Feb 14, 2023
日本物理学会北海道支部講演会
講演題目: エキゾチック超伝導体における非相反・非対角応答
講 師 : 柳瀬 陽一 氏
京都大学大学院理学研究科
日 時 : 2023年2月14日(火) 15:00-16:00
場 所 : 北海道大学理学部2-402
要 旨 :
本講演では、超伝導体におけるさまざまな非相反応答・非対角応答の理論的枠組みと計算結果を示す。特に、空間反転対称性が破れた物質における超伝導ダイオード効果、非線形超伝導光学応答、非相反マイスナー効果、超伝導圧電効果について議論する。私たちは、超伝導ダイオード効果 (SDE)の最近の発見 [1]に刺激されて、SDE を引き起こす内因的メカニズムを提案した [2]。 SDE は臨界電流に非相反性が現れる現象である。 内因的SDE がランダウ臨界運動量の非相反性によって引き起こされることを示し、ヘリカル超伝導状態でのクロスオーバー現象が SDE によって証明できることを提案する。 次に、空間反転対称性を破る超伝導では、巨大な光電流生成や第二次高調波生成などの非相反光学応答が起こることを示す [3]。 応答は低エネルギーで発散的であり、非相反超流動密度と、ベリー曲率微分に起因する。 これらの指標は、非線形光学における超伝導体の性能を定量化する。 超流動密度への非相反補正は、非相反マイスナー効果をも引き起こす [4]。 また、時間反転対称性がある非中心対称超伝導体における非相反光学応答の微視的条件を示し、 それがスピン三重項クーパー対に由来することを示す [5]。上記の非相反応答や超伝導圧電効果を超伝導体UTe2の微視的模型に適用した結果を紹介し [6]、エキゾチック超伝導体の秩序変数を同定する道筋についても議論したい。
[1] F. Ando, Y. Miyasaka, T. Li, J. Ishizuka, T. Arakawa, Y. Shiota, T. Moriyama, Y. Yanase, and T. Ono, Nature 584, 373 (2020).
[2] Akito Daido, Yuhei Ikeda, Youichi Yanase, Phys. Rev. Lett. 128, 037001 (2022).
[3] Hikaru Watanabe, Akito Daido, Youichi Yanase, Phys. Rev. B 105, 024308 (2022).
[4] Hikaru Watanabe, Akito Daido, Youichi Yanase, Phys. Rev. B 105, L100504 (2022).
[5] Hiroto Tanaka, Hikaru Watanabe, Youichi Yanase, arXiv:2205.14445.
[6] Michiya Chazono, Shota Kanasugi, Taisei Kitamura, Youichi Yanase, arXiv:2212.13102.
世話人: 北 孝文
(北海道大学大学院理学研究院物理学部門)