「潮汐破壊現象からの高エネルギーニュートリノ放射」
早崎 公威 氏

Feb 16, 2023


日本物理学会北海道支部講演会

講演題目: 潮汐破壊現象からの高エネルギーニュートリノ放射
講 師 : 早崎 公威 氏
      Chungbuk National University, Korea
日 時 : 2023年2月20日(月) 16:00-17:00
場 所 : 北海道大学 工学部 アカデミックラウンジ3
要 旨 :
ビッグバン理論によると、ニュートリノは宇宙で光子に次いで 2 番目に数の多い素粒子である。物質との相互作用が非常に弱く検出が難しいためゴースト粒子とも呼ばれている。しかし、この性質によってニュートリノは天体現象(太陽や超新星爆発)に関する物理情報を星間物質にほとんど邪魔されることなく運ぶため、その現象をより深く理解することができるという利点がある。 特に高エネルギーニュートリノは相対論的なエネルギーまで加速された宇宙線が周囲の物質または光子と相互作用することによって生成されることが知られている。最近IceCube(※)で検出された高エネルギーニュートリノと潮汐破壊現象(TDE)との間に一定の関連があることが分かった。TDEとは星が超大質量ブラックホール(SMBH) に近づくとその潮汐力によって星が破壊され、その残骸がSMBHに降着することによって数ヶ月間続くフレアを示す現象のことである。このためTDEは非活動銀河の中心にある超大質量ブラック ホール (SMBH) の検出に利用されている。さらに、近年の精力的な多波長電磁波観測によってTDE の多様性が明らかになってきた。 特に今回関連が指摘されたAT2019dsg、AT2019fdr及びAT2019aalc は赤外線、光学、紫外線で明るく輝く一方で電波放射は弱いというTDEの中でも珍しい特徴を示している。 この特徴がIceCube によって検出されたサブ PeV スケールのニュートリノとの時間的および空間的な関連性を強めており、TDE からの高エネルギーニュートリノ放出機構を研究する強い動機を与えている。今回の講演では、TDEとIceCubeニュートリノとの関連について現在ある問題を整理して共有することを目的とする。
【※】100GeV以上の高エネルギーニュートリノの検出を目的として2011年に南極に建設されたニュートリノ望遠鏡
[1] K. Hayasaki, Nature Astronomy, Volume 5, p. 436-437 (2021)
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2021NatAs...5..436H/abstract
[2] S. van Velzen, R. Stein, M. Gilfanov, M. Kowalski, K. Hayasaki, et al. (2023)
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2021arXiv211109391V/abstract

世話人: 丹田 聡

(北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門)

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