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日本物理学会北海道支部 講演会


講演会のアナウンスは支部会員のメーリングリストで行われます。 支部講演会・共催の講演会のお申し込みは、支部役員までご連絡下さい。
支部講演会の過去ログは、右バナーのArchivesからご覧ください。

最近5回分の講演リストを以下に表示します。

「磁性量子流体のスピン配向性秩序が生み出す新奇な位相欠陥構造」
竹内 宏光 氏

May 16, 2023


日本物理学会北海道支部講演会

講演題目: 磁性量子流体のスピン配向性秩序が生み出す新奇な位相欠陥構造
講 師 : 竹内 宏光 氏 
      大阪公立大学・講師
日 時 : 2023年5月16日(火)16:30~18:00
場 所 : 北海道大学 工学部 アカデミックラウンジ3
要 旨 :
スピン1の冷却原子気体ボース・アインシュタイン凝縮には、ネマチック液晶のような配向性秩序をもつ相が存在する。この系の配向性は超流動性にかかる量子位相とスピン自由度が結合することで発現することが特徴であり、これをスピン配向性と呼ぶ。最近韓国の実験グループは、この効果に代表される複合欠陥(渦とドメイン壁の複合体)という構造を直接観測することに初めて成功した[1]。発見当初この構造は非平衡過程で現れる準安定な構造とみなされたが、その内部に局所的な強磁性秩序を有して楕円状の超流動速度場を保持する「量子楕円渦」として安定化することが後に明らかになった[2]。このように複数の異なる秩序状態が共存できる系では、位相欠陥の内部構造や外形が従来のものと異なる多彩な構造が起こり得る。孤立した半整数スキルミオン[3]もその一種である。 本講演では 、スピン配向性と量子流体力学に着眼した独自の視点からこれらの現象について紹介する。

[1] Seji Kang, Sang Won Seo, HT, and Yong-il Shin, PRL 122, 095301 (2019)
[2] HT, PRL 126, 195302 (2021)
解説記事:プレスリリース(https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2021/210524)
[3] HT, PRA 105, 013328 (2022)
解説記事:プレスリリース(https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2021/220209)

世話人: 野村 竜司
(nomuraryuji@eng.hokudai.ac.jp)
北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門

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「動的に非対称な液体の混合に駆動されるゲル動力学:出自の異なる2つの拡散方程式の結合」
田中 良巳 氏

May 16, 2023


日本物理学会北海道支部講演会

講演題目: 動的に非対称な液体の混合に駆動されるゲル動力学:出自の異なる2つの拡散方程式の結合
講 師 : 田中 良巳 氏
      横浜国立大学
日 時 : 2023年3月6日(月) 15:00-17:00
場 所 : 北海道大学 工学部 物理工学系大会議室 A 1-17室
要 旨 :
下記文献の内容およびその後の研究の展開について話す。隠れた主題は,一見似た顔を持つが出自の異なる二者の遭遇」だと思っている。ゴムやゲルが溶媒を吸収するときの体積変化のダイナミクスは,1940年代から研究されてきたが,1970年代の田中豊一らの一連の研究により,ゲルの膨潤(或いは収縮)を特徴づける拡散定数は,溶媒の自己拡散定数にくらべ2桁小さく網目の弾性率と溶媒透過抵抗の比として決まる共同拡散定数と呼ばれる量であることが広く受け入れられた。ここでは多成分溶媒中でのゲルの動力学を扱う。ゲルを,例えば水とエチレングリコール(以降EG)のような完全相溶でかつ粘度が大きく異なる2種溶媒の間で溶媒置換した時,ゲルの体積が一時的な極大あるいは極小をとった後,平衡値に緩和する。水-EG間で溶媒置換されるアクリルアミドゲルにおける実験は,置換開始から体積の極値までの時間は,(上述の共同拡散ではなく)溶媒の相互拡散によって決まることを示す。また,モデル計算―2液混合溶媒中で動くゲル網目の力学的釣り合いを多成分の連続体力学で採用される一般的な仮定とオンサーガ―原理で定式化の結果は,溶媒濃度に関する拡散方程式(通常の分子拡散)およびゲル網目の変位場についての拡散方程式(上述の共同拡散;網目の変形エネルギーの緩和と記述)という物理的起源の異なる2つの拡散方程式の間の自然な共役の形を示してくれ,上述の実験結果を説明する。“異なる二者の遭遇”にはもう一つの意味もある。液体の拡散混合を記述する自然な座標系はEuler座標であるが,弾性体であるゲル網目の変形や歪はLagrange座標で書くのが適切である。多成分溶媒中でのゲルの動力学の定式化には,この二つの座標系の使い分けが鍵となる(厳密にするにせよ近似的にするにせよ)。発表では,このあたりの事情についても講演者の理解の及ぶ範囲で言及したい。

[1] Y. Tanaka, M. Seii, J. Sui, M. Doi, J. Chem. Phys. 152, 184901 (2020).

世話人: 折原 宏

(北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門)

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「高強度テラヘルツ磁場パルスが誘起する非線形スピン応答」
廣理 英基 氏

May 16, 2023


日本物理学会北海道支部講演会

講演題目: 高強度テラヘルツ磁場パルスが誘起する非線形スピン応答
講 師 : 廣理 英基 氏 
      京都大学化学研究所
日 時 : 2023年4月24日(月)10:30~12:00
場 所 : 北海道大学 工学部 アカデミックラウンジ3
要 旨 :
スピンの非線形超高速ダイナミクスの理解は、基礎科学的な側面からだけでなく、情報伝送・処理・記録用の様々なスピントロニクスデバイスを設計・開発する上でも重要である。典型的な強磁性体ではギガヘルツ領域にスピン歳差振動を持ち、その非平衡状態のダイナミクスがマイクロ波磁場を用いて詳細に調べられてきた。一方、反強磁性体は隣接するスピン間の強い交換相互作用により、より高周波のテラヘルツ(THz)周波数帯に固有モードを持つ。このため、近年THz電磁波と反強磁性体中のスピンとの相互作用が広く研究されている。しかし、これまで反強磁性体のスピンを超高速で制御する研究はほとんど無く、非線形なスピン応答についての理解はほとんど得られていない。本講演では、高強度なTHz磁場パルスの発生、そしてスピンの強励起による高次高調波発生、またTHz磁場パルスによるフロケ状態生成と磁化制御について紹介する。

[1] Seji Kang, Sang Won Seo, HT, and Yong-il Shin, PRL 122, 095301 (2019)
[2] HT, PRL 126, 195302 (2021)
解説記事:プレスリリース(https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2021/210524)
[3] HT, PRA 105, 013328 (2022)
解説記事:プレスリリース(https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2021/220209)

世話人: 小布施 秀明

(北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門)

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「表面原子層超伝導体:スピン分裂と動的なスピン運動量ロッキング効果」
内橋 隆 氏

Feb 20, 2023


日本物理学会北海道支部講演会

講演題目: 表面原子層超伝導体:スピン分裂と動的なスピン運動量ロッキング効果
講 師 : 内橋 隆 氏
      物質・材料研究機構
日 時 : 2023年2月20日(月) 16:00-17:00
場 所 : ZOOM(オンライン)
要 旨 :
近年研究が活発化している2次元超伝導体の中でも、半導体表面上に作製された原子層結晶は走査トンネル顕微鏡や角度分解光電子分光などの表面科学で発達した実験手法の適応が可能であるという、ユニークな特徴をもつ。われわれは2011年に表面原子層結晶の超伝導転移を初めて直接に観測して以来、この系を表面科学および超伝導物性の観点から研究を行ってきた。本講演ではこれまでの研究を概観するとともに、最近発見した特異なスピン分裂構造と動的なスピン運動量ロッキング効果による臨界磁場増大現象について解説する。

世話人: 武貞 正樹

(北海道大学大学院理学研究院物理学部門)

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「潮汐破壊現象からの高エネルギーニュートリノ放射」
早崎 公威 氏

Feb 16, 2023


日本物理学会北海道支部講演会

講演題目: 潮汐破壊現象からの高エネルギーニュートリノ放射
講 師 : 早崎 公威 氏
      Chungbuk National University, Korea
日 時 : 2023年2月20日(月) 16:00-17:00
場 所 : 北海道大学 工学部 アカデミックラウンジ3
要 旨 :
ビッグバン理論によると、ニュートリノは宇宙で光子に次いで 2 番目に数の多い素粒子である。物質との相互作用が非常に弱く検出が難しいためゴースト粒子とも呼ばれている。しかし、この性質によってニュートリノは天体現象(太陽や超新星爆発)に関する物理情報を星間物質にほとんど邪魔されることなく運ぶため、その現象をより深く理解することができるという利点がある。 特に高エネルギーニュートリノは相対論的なエネルギーまで加速された宇宙線が周囲の物質または光子と相互作用することによって生成されることが知られている。最近IceCube(※)で検出された高エネルギーニュートリノと潮汐破壊現象(TDE)との間に一定の関連があることが分かった。TDEとは星が超大質量ブラックホール(SMBH) に近づくとその潮汐力によって星が破壊され、その残骸がSMBHに降着することによって数ヶ月間続くフレアを示す現象のことである。このためTDEは非活動銀河の中心にある超大質量ブラック ホール (SMBH) の検出に利用されている。さらに、近年の精力的な多波長電磁波観測によってTDE の多様性が明らかになってきた。 特に今回関連が指摘されたAT2019dsg、AT2019fdr及びAT2019aalc は赤外線、光学、紫外線で明るく輝く一方で電波放射は弱いというTDEの中でも珍しい特徴を示している。 この特徴がIceCube によって検出されたサブ PeV スケールのニュートリノとの時間的および空間的な関連性を強めており、TDE からの高エネルギーニュートリノ放出機構を研究する強い動機を与えている。今回の講演では、TDEとIceCubeニュートリノとの関連について現在ある問題を整理して共有することを目的とする。
【※】100GeV以上の高エネルギーニュートリノの検出を目的として2011年に南極に建設されたニュートリノ望遠鏡
[1] K. Hayasaki, Nature Astronomy, Volume 5, p. 436-437 (2021)
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2021NatAs...5..436H/abstract
[2] S. van Velzen, R. Stein, M. Gilfanov, M. Kowalski, K. Hayasaki, et al. (2023)
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2021arXiv211109391V/abstract

世話人: 丹田 聡

(北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門)

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